【DIG TAG】Vol.01 モスラミュージック 片山陽介君

服飾にまつわることがなにかと好きなわたくしです。けれどもあまり心に余裕がないからかさほど色んなことを知ってるわけでもありませんし、知るきっかけもそんなにありませんでした。そんな、あくまで自分自身のための「”きっかけ”を得るための活動」としてのインタビュー記事です。お付き合いくださる皆さまに心より御礼申し上げます。

モスラ片山君。渋いパッケージのレコードを片手に。

―― 服を好きになったきっかけというか原体験のようなものがあれば教えてください。

最初の最初ってなんだろうな・・・僕は結構古着なんで。ラルフローレンが好きだったんですけど、それは元々親が買ってくれてて。中学校1~2年生のときに『スターズアンドストライプス』という古着屋がビブレの裏にあって。コンバースが欲しかったんですけど、新品で買うお金がなくて古着でもいいかなぁと思って。

―― チャックテイラーというやつですか?

チャックテイラーは70年代以前なんで。80年代以降はオールスターなんですよ。80年代のを狙って買いに行ったわけじゃないんですけどね。色々とコンバースが並んでいる中で「なんか雰囲気違うな~」と思って手に取ったものが80年代のものだったんです。店員さんがディティールについて説明してくれたのを覚えています。これが80’sで。ここにステッチが入ってたりだとか、ここにUSAって書いてたりだとか。なんかちょっと違うなとかんじて「かっこいい」って思っちゃって買ったのが最初です。何が違うのかよくわかんなかったですけどね最初は。(店員さんに)説明してもらってはじめはこれの真っ赤を買って。ゴムの先のほうの部分も短かったり、細身なんですよ。古着で初めて買ってみて「なるほどビンテージっていうのがあるんだ」と思った最初の体験ですね。

片山君の所有する80年代のコンバース。

―― いくらぐらいしたか覚えてますか?

デッドストックで3980円くらい?

―― 無茶苦茶安いですね(笑)

無茶苦茶安いでしょ?20年前だからそんなもんだった気がします。

―― そこからどういうふうに広がっていきましたか?

あ~。そこから買う服は全部古着を選ぶようになりましたね。で、それぐらいから雑誌も買うようになって『BOON』とか『ストリートジャック』とか『リラックス』も。リラックスはファッション詩というよりカルチャー誌だけど。しらみつぶしに買うようになって。バックナンバーとかも。・・・っていう感じです。

―― 服を買うことで交友関係って広がっていきましたか?

中学生の頃は同級生とかって感じだったけど、高校生になってからは今イオンモール岡山になっている林原のモータープールや汽車公園(下石井公園)でフリマやってて。めちゃよかったんですよ100店舗ぐらい出てて。で、そこで同い年とか、いっつも出店してる奴もいて「あれ?前も来てくれたよね」「俺あっちで出してたよ」みたいに仲良くなって。同世代で交友関係が広がるようにもなってきましたね。まぁ、典型的にそんなすごく年上の人にも興味なかったので。”古着オヤジ”みたいな人には。だから同世代の人とか古着屋の店員さんとかがかっこいいなと思ってました。

19歳のときに約2万円で購入したという、60年代ランタグのチャンピオンのTシャツ。

―― 古着屋のバイトしてたとか前に聞きましたが?

そうそう。バイトっていうか手伝いなんだけど。ええと・・・古着屋さんがあって、磨屋町のマルゴの奥ぐらいに。そこのオーナーが、元々プライウッドの店長さんで、お店に僕がよく通ってたんですよ。そしたら「煙草買ってくるから店番してて」っていうのが何回かあって、それがしばらくしたら一日任されるようになって。給料はなかったんだけど、嬉しかったですね。それでお手伝いしてました。バイトっていうよりは「入り浸っていた」って感じですね。

―― そこからアパレルの世界に進みたくなった・・・とかはなかったですか?

え~どうだろう。でも古着屋やりたいとか思ったことはあんまりないですね。「上には上」がいすぎて、それに、当時バンドやってたから音楽で食いたかったみたいな感じですね。でもめちゃくちゃ古着の勉強はしてました。なにがどうとか、このディティールはこの年代はどうとか。こういうのがレアで、とか。自分が着ているものがどういうものだったかを知った上で着たかったんです。言ってみれば凝り性ですね。全身70年代のもので固める、とか。70年代のパンクやってるから70年代のものしか着ない、とかそんな感じでした。

―― 最近のファッションの潮流についてどう思いますか?

めちゃくちゃ面白いなと思う。全く否定的な意見はないです。昔は「この服にはこの服を合わせる」というのが決まってたけど、今の人はそういうのが無くて。そっちのほうが絶対ファッション楽しんでる感じがある。ドメスティックブランドとぼろぼろの古着合わせたりとかもそうだし。(最近の僕は)年齢を重ねて落ち着いてきたというよりまだまだ高い服も安い服も着ていきたいって感じでいます。

70年代バータグのチャンピオンのTシャツ。

―― ご自身でモスラミュージックとしてTシャツの作成等展開されてますよね。それを幅広くうやりたいとか思いませんか?

そういうのは全然ないですね。自分が着たいから作っただけなんで。「作るから欲しい人いますか?」って聞いてみたらそこそこ売れちゃって。ラッキーでした。一番最初のは150枚作って、130~140くらいは売れました。”アパレル展開”というよりバンドマンが自分のとこのTシャツ作るのと似たような感覚でした。

―― 少しお話がそれますが、全然知名度も何も無い人がそういうTシャツとか作るのってどう思います?

全然良いんじゃないですか?むしろガンガン作っていくほうが楽しいんじゃないかと思います。そういうのでもすっごくデザインが良ければ売れるような気がしますけどね~。コンセプトやテーマが固まってたらよりいいし、固まってなくてもかっこよかったら。売れても売れなくても本人が楽しかったらそれでいいと思いますよ。

―― 今でもよくいくお店はありますか?

『ガレージパラダイス』とか『dawn(ドーン)』とか『コツボ』とか。ドーンは友人がお店にいるというのもあるけど面白いお店ですよ。買おうと思ってたものじゃないけど、面白いものがあったりするから。新しい発見があります。コツボはヨウジヤマモトとかギャルソンとかハイブランドも置いてるので見に行っちゃいますね。ガレージパラダイスのほかにも『プライウッド』は昔からある老舗ですよね。

あと昔、オランダ通りに『ライフ』って店があったり磨屋町の『ハーフガード』なんてお店があってよく行ってましたね。もう今はないですけど。ライフはガレージパラダイス系列のお店です。ハーフガードはちょっとストリート寄りのお店だったかな・・・カーハートとかいっぱい置いてたので。あとはまぁ初代プライウッドと・・・まだ県庁通り
沿いにあった頃の『ビバリーヒルズ』とか。それと、高校生ぐらいになったら同級生ぐらいの友人が古着屋でバイトしてたりして。その関係で赴いたりとかですかね。

―― 自分の中での決まった着こなしとか、取り入れてしまいがちなアイテムとかありますか?

え~、なんだろう・・・「音楽のカルチャーに準じたファッション」かな?パンクロックだと細いジーパンに少し小さめのTシャツ着て、ドクターマーチンとかオールスター履いて、とか。それっぽい要素は入れたいですね。太ったら着れないんで。それも含めて今ダイエットしてます。皮ジャンとかは全部売っちゃったけど・・・。そうそう、甲本ヒロトさんみたいな感じ。

―― 音楽と服は密接なものですか?

まぁ・・・。切り離せなくないですか?音楽するにも、演奏するにも服を着なければならないし。かっこよく見られなきゃいけないし、となるとかっこい服着なきゃいけないし。

―― 着こなしの「先生」だとか「憧れるような人」はいますか?

え~、誰だろう・・・。街行く人と雑誌?とロックミュージシャンかな?街行く人は勉強になりますよ。みんなお洒落だから。昔は古着屋の店員さんだったけど、今はもうみんな年下なんで。ね?参考にさせてもらうって言っても「おっさんが何言ってんだ」って感じになりそうで。めっちゃ若い人ばっかりの古着屋さんには行けない。怖い。めっちゃ接客されても恥ずかしい・・・みたいな感情があります。「嫌だ」っていうよりそういう感情に近いですね。

―― 今と昔の着こなしって変わりました?

いや、変わってないと思いますけどね。どうなんだろう。まぁ太ったんでゆるい服着るようになったのはありますけどね。昔はタイトなのしか着てなかったんで。とりあえず細身のばっかり着てましたね。

あと、高校生の頃から渋谷系には無茶苦茶注目してて。それこそ小山田圭吾とかあのへんのファッションは参考にしてて。バケットハットかぶって。ボーダー着たり。94~96年くらいの話ですね。別に甘いマスクじゃないですけど、小沢健二みたいな格好してました。

―― やはり多感な時期にメディアなどを通して入ってきた情報からはかなり影響を受けていますか?

ですね。10代の頃影響を受けたものはいつまで経っても好きだっていうのはありますね。80年代の服を着るようになる前はオーバーサイズの服着たり、アベイシングエイプのTシャツ頑張って買ったりもしてました。

―― これからの未来ある人向けての、「ファッションを楽しむためのアドバイス」があればお願いします。

人の目を気にせず、なんでも着る。色々言ってくる人の意見を聞かない。僕は高校生の頃に「それってお洒落なの?」と言ってくる友人に「お前はお洒落だからわかんね~だろな~」と言ってました(笑)ま、尊敬する人の意見以外なにも聞かなくていい気がします。ほんとは大切なんだけど。というのも、誰かにそう言われたわけじゃなくて、気付いたらそうなってた、みたいな話ですけどね。

―― なるほどなるほど、本日はお時間割いていただいてありがとうございました。

どもども。ありがとうございました。

優しくチャンピオンのビンテージの歴史について解説していただきました。
こちらはペンキプリントのバータグのチャンピオンのTシャツ。
古着屋での店番のバイト代がわりの一品だとか。
ブルーハーツの『旅人』のときのツアーTシャツ。