toggle
2019-12-18

【ひとぐすり】お勝手ふらふら

病は人間を通過することによって弱毒化する。制度や支援の狭間で生きづらさを抱え孤立しがちな方が、つながりを生み出せるように、ひとぐすりとなる人や場所の情報を届けたい。

『お勝手ふらふら』

売り上げ目標もない。高い理想もこだわりもない。さらには、お客さんの話を聞いてあげるわけでもないし、教えてあげられることもない。ただ、毎月15日には必ず開いている。様々な人間模様があって、みんな笑顔になって帰っていく。そんな不思議な場所。


難波衣里さん:介護老人保健施設の相談員であった頃、家と施設との往復だけの日々に窮屈さを感じていました。ルーティーン業務をこなすことだけが評価軸となるような働き方にしんどさがありました。滅多に外出することのない入居者さんがいる介護の現実を目のあたりにし、そもそも24時間365日施設内にいること自体がおかしくないかな?何でみんなは疑問に思わないの?なんて葛藤した時もありました。

今の職場である小規模多機能ホームでは、毎日何かしらのハプニングが起こるけど、利用者さんと一緒に季節を感じ、その人らしくいられる時間をその人の傍で感じることができるという心地よさがあります。

仕事でのかかわりって表面上の話ししかなくて寂しいなという思いがあって、いつしか介護とか福祉とかいう垣根もなく、気兼ねなく素の自分を出せる場所があったらいいなと漠然と思っていました

伊東陽子さん:大学卒業後は、兵庫県内で6年ほど市役所に勤務していましたが、これからの人生は住み慣れた地元で過ごそうと思い、岡山県に戻ってきました。高校時代の恩師である先生に相談したことが契機となり、社会福祉協議会に勤めることとなりました。

人にかかわる仕事には興味があったし、相談員としての経験もあったのですが地域づくりという社会福祉協議会での業務は、つかみどころがなく漠然としたもののように感じていました。上司の計らいもあり1年目から無理しない地域づくりの学校に参加することになり、白紙の状態で『福祉の枠組み外し』を学ぶことができて、とても良い経験となりました。

上司だって上司という肩書を外して呑める場所があったらいいよな〜といつも考えていました。

「二人はどこで出逢ったのですか?」

2015年度無理しない地域づくりの学校で私たちは出逢ったのですが、この時のゲスト講師であった横田さんのプレゼンを聞いていて私たちはとても刺激を受けたのを覚えています。2016年夏、2人で海辺のひまわりを見に行った帰り道。『何かさ〜だれもが気兼ねなく集まれる場所があってもいいよね〜』と、お互いが相手の心中を探りながらもこぼれた言葉が2人に火種をつけたように思います。

無理せずに月1回ペースがいいね。お勝手っていうフレーズがいいよね。場所は銘木バーお借りできないかな。など2人のイメージが心地よいほどにマッチしていましたね。そして、早速翌月にはプレという形で実際にやってみました。一番目のお客さんは、お散歩帰りのご夫妻で、愛育委員をされておられる方でした。毎月15日に必ずオープンするスタイルで3年が過ぎようとしています。

「3年やってきてどのようなことを感じますか?」

難波衣里さん:ここで出会った人同士がつながっていくことが嬉しい。相談しに来たわけではないけど結果的に相談支援の導入になったり、たまたま居合わせたのが本職の専門家であったりすることがあって、『場』の力を感じることがあって面白いですね。

伊東陽子さん:自分にとっての居場所になっている気がします。安心して戻れる場であり、リセットできる場所でもあります。どんな立場の方でもどんな状況の方でも安心して戻ってこられてリセットできる場があったらいいなと思うし、そんな場を持っているいるということがきっとその人の力になるのだと思います。お勝手ふらふらがそんな場所になってくれたら嬉しい。

居心地重視というお互いの感覚の共通している部分はあるけども、場作り対して重きを置くポイントが違うんです。違うからそれが面白い。まずやっちゃおうという難波と、真面目で考えすぎぎる伊東。ブレーーきとアクセルの役割みたいでいい塩梅なのかもしれません。

専門家が集まる場になっているのですか?」

お勝手には色々なフックや仕掛けがるのかもしれません。

人の集まりとか好きじゃないけど、建築が好きだから銘木バーには行ってみたい。とか、悩み事を相談しに行くほどじゃないけど、美味しいご飯とお酒が飲めたら行ってもいいかな。子育ての息抜きになる場所が夜にあるなら行ってみてもいいなか。いつも2人がいるなら顔だけ見に行くかっていう感じで、それぞれ違う目的で来てくださってるのが面白いところです。

曜日固定ではなくて毎月15日開催というメリットもある気がします。

お客さんはお二人の繋がりが多いですか?」

ゲストサーバーという仕掛けみたいのがあります。きっと初めて来られる方は、誰がお客さんかサーバー側なのか分からないくらいに自然な雰囲気を感じていただけると思いますが、毎月ゲストいう名のお手伝いの方をお呼びしています。ゲストの話題や繋がっている人によって、場の空気が変わり毎回違う盛り上がりが見えるのが楽しみの一つになりつつあります。安心できる知り合いが安心できる知り合いを誘ったり、引き寄せてくれています。

いつしか親戚の集まりのような場ができている。これは、無理しない地域づくりの学校とともに広がって成長している感じがします。毎月15 日、気が向いたらときはふらっとお立ち寄りくださいませ。

ゲストプロフィール

伊東陽子さん(写真手前)
福祉な女将黄色。大学から11年を神戸で過ごしたのち2016年地元岡山へ。
同年4月より岡山市社会福祉協議会に勤務。現在子育て奮闘中。

難波衣里さん(写真奥)
福祉な女将青色。生まれも育ちも岡山市。
大学卒業後、老人保健施設で介護員、相談員として勤務した後、
2017年4月小規模多機能ホームにて勤務している。
【保有資格】社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士

営業日:毎月15日
場所(及び取材のご協力):レンタルスペース『銘木ばぁ』
facebookページお勝手ふらふら

関連記事