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2020-06-23

【内懐】Vol.04 勝俣将樹さん(岡山市ESDプロジェクト参加団体『あこがれスタイル』代表)

”内懐(うちぶところ)”とは「人に知られたくない心の中の様子」。

自分らしさに自信を持てないでいる方へ、温かい気持ちと、一歩を踏み出す勇気を届けたい。 ひとりひとり違っていい、ひとりひとり違って当たり前、ひとりひとり違う方がいい。 みんな違うからこそ生きている意味がある。ゲストとの対話から、その人らしさ、内懐、困難との向き合い方、回復の哲学などの「ヒューマンストーリー」を伺い、自分らしく生きるためのヒントを探る旅。

第4回目のゲストは岡山市ESDプロジェクト参加団体『あこがれスタイル』代表の勝俣将樹さん。

あこがれスタイルってどんなところですか?

2015年12月に発足したコミュニティーです。あこがれスタイルは一人ひとりの価値観があなたとあなたの生きる社会を紡ぐ場所のことです。そこに集まるみんなが、自分らしい生き方を見つけ、お互いを認め合い、人生を応援し合うことができる。そんなコミュニティーを目指しています。

イベントの企画としては『フラッと寄れるフラットな交流会』『やりたいことを実現するイベント支援事業』『メンターとして活躍するためのセミナー事業』『プレゼン塾』『就活面接対策』『コーチング講座』『思いを価値にする名刺コンサルティング』など様々なテイストのものがあり、岡山市のESDプロジェクト参加団体でもあります。情報発信はフェイスブックのみとしており、口コミや紹介などの繋がりを大切にしています。また、利用者の条件や制限などは設けていません。倉敷市での7月豪雨の被害が転機となり、現在の岡山の拠点に移って活動を始めることになったのです。

あこがれスタイルを立ち上げた経緯はなんですか?

大学院進学後はコミュニケーション教育を学びながらNPO法人だっぴの活動に従事していました。若者と大人たちとのつながりや機会をつくる活動を通じて、普段出会わない人との出会いを作ることの意味や、学び会える場の必要性を確かめたりしていました。

さまざまなイベントを企画してみると、学んでキャリアアップしていくこと以外にも、もっと価値観の広がりが大切なんだと確信してきました。世の中にはいろいろな人のいろいろなニーズが溢れているんだ。みんなの望みを叶える場所があったらもっと豊かな社会になるはずだ。そして何よりしっかりとその想いを拾いあげる『場』が必要だ。それを可能にするコミュニティーをつくりたい。そう思ったのです。

今後はどうしていきたいのでしょうか?

みんなの希望からできたイベントによって収益を出し、人を雇えるようにしたいです。いわゆる『普通の働き方』が苦手な人でも働けるような場にしていきたいと考えています。

工学部では人工知能の研究をされていたとか?

そうですね。大学では人工知能やディープラーニングの研究をしていました。もともと仕組みを作るのが好きだったんです。仕組み通りには動かないこともあるけれど、それも想定の範囲内と考えてあらゆるエラーも想定したプログラムを予め作っておくのです。いったん仕組みをつくると、そこに流れができて物や人が動いていく。ビジネスや社会にも応用できる。そこが魅力的でした。囲碁対局ソフトの制作研究では、ソフト自身が直観的に判断し学習を重ねていく仕組みづくりに没頭していました。

卒業後、就職をされても活動を続けられておられますが原動力はどこにあるのでしょうか?

金融機関での仕事とあこがれスタイルの活動は両立したいと強く思っていましたが、実はうつ状態で休職をせざるを得ない時期があったのです。職場では、管理職からのトップダウンでプロジェクトや業務が進んでいく仕組みが根強く残っていました。現場のスタッフはいつしか元気がなくなってしまいモチベーションの維持が難しいという経験をしました。私は、現代のニーズにマッチしない働き方を変えたいと考え、人材育成が必要だと上司に何度も訴え続けましたが、起案が通ることはありませんでした。
内容が良くても『それは今じゃない』とも言われたこともあります。どうにか良くしていきたい、でも分かってもらえない。試行錯誤しても一向に答えはみつからないまま、退職も考えました。そんな葛藤や敵の見えない戦いを続けているうちに、いつしか心のバランスが崩れてしまいうつ病で休職をせざるを得ない状況になってしまいました。今後の働き方を漠然と模索していたちょうどこの頃にアチーブメントという目標達成思考に出会いました。もやもやした思考を文字に落とし込んで、とことん言語化しました。難しい環境で戦ってきたからこその気づきと出会い、休職があったからこそここまで辿り着いたと考えるまでに至りました。うつになってこそ学ぶ機会に恵まれ、自分の軸が定まってきたように思います。

どのような考え方や思考の変化が生まれたのですか?

今でもストレスはあるし、簡単に組織は変わらないため葛藤も残ります。自分が活かせる自分の強みは何か?今、何が求められているのか?などとストイックに考えるよりも、自分の本当にやりたいことは何なのかなと考え、まず自分ができそうなことからやってみようと思えるようになりました。組織と戦い組織を変えようとするのではなく、自分のできることを中心にまず頑張ってやってみようと思えるようになったのです。
現場で頑張って働いている人の効果が目に見えて、スタッフのモチベーションが維持できることが大切なんだと考え、業務成績をパソコンで見える化する仕組みをつくってみたのです。それが採用されることとなりました。結果的にはそれは、自分の強みを活かすことであり楽しみながら取り組むことが出来ていました。必要なのは一人で戦い葛藤することじゃないんだと気が付いたのです。

困難な状況へ立ち向かうために大切な考え方はありますか?

一言でいうと『本質ではないこと以外どうでもいい』と考えます。一番大事なのは何なのかをとことん掘り下げていき、感情も思考も全てそぎ落とす。自分の本質をしっかり持っておけば本質以外はどうでもいい、そう思えると身軽になってくるのです。

勝俣さんにとっての本質ってなんですか?

みんなが幸せになれる仕組みをつくること。理念みたいなもので、ここからブレないことが本質に繋がっています。極論を言えば、それ以外どうでもいいのです。理念がしっかり固まっていることや理論的な視点から課題を紐解くことが自分の強みですが、時には理念からブレてはいないか、ズレてはいないか自己点検することが必要になってきます。実は私は、雑談が苦手で、人の気持ちが読めないといわれます。ASDの診断も受けましたけども、自分の大切な特性の一つと考えています。コミュニティーを作るとか本来は苦手ですし、コミュニケーションは得意とは言えません。それでも本質のために必要なことなので頑張って自らコミュニケーションを取るように頑張っています。

とても理論的でシャープな思考ですね。

どんな現象や状況に対しても、学んで紐解いていく姿勢が大切だと考えています。一見どろどろでぐちゃぐちゃに絡み合っているような人間関係の課題も、理論的に紐解いていくことができると考えています。『理論』か『感情』どちらが大切かという議論がよく出るのですが、正直どちらも必要なんです。人呼んで”あたたかい理論”ですね。

例えば、あこがれスタイルの居場所で利用者同士のトラブルが起きた時どう対処しますか?

まず話を聴きますね。トラブルに見えるような多くの場合、それはその人が問題だと思っていること自体が問題であることが多いのです。この原則をもとに、しっかりと状況を確認し話を聴く大抵そうしてきました。自分は理論っぽい部分があるので良くみんなから「理論じゃなくて感情なんだよ!」と言われますが、理論で紐解いていくことを大切にしています。

人間関係も理論的に紐解くという視点がとても新鮮でした。ありがとうございました。でも勝俣さんみたいに軸のある生き方をする自信がありません・・・。

難しく考えずにキーワードを書き留めておくだけでも良いと思いますよ。例えば私には3つの人生のキーワードがあります。それは『真理』・『創造』・『好循環』です。これを常に意識しておくことで人生がぶれないように生きていくことができると考えています。皆さんも自分だけのキーワードを書き記してみてください。なかなか難しくて一人ではできないという方もおられるかと思いますので、今後何らかの形で、自分のマインドや考え方のコツなどを皆さんに発信していきたいと考えています。あこがれスタイルのイベント情報などをチェックしていただければ嬉しいです。

 

 

ゲストインタビュー

勝俣将樹(岡山市ESDプロジェクト参加団体『あこがれスタイル』代表)
https://www.facebook.com/akogare.style.okayama/
倉敷市出身。ぜん息やいじめなどの経験から生きづらさを抱えて育つ。人間の思考への関心を持ち大学では人工知能を専攻。更に大学院進学後はコミュニケーション教育を学んだ。様々な活動に関わる中で、「思いを価値にする」という人生の目的を定義することとなった。現在は金融機関で働きつつ、あこがれスタイルを運営している。

インタビュー・編集:大谷淳
撮影:金光浩太郎

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